公開: 2024年5月25日
更新: 2024年5月25日
日本社会では、家庭の経済が貧しい状態にあっても、子供たちには可能な限りより高い水準の教育機会を与えようとする傾向が見られます。それは、日本社会だけでなく、東アジアの国々に共通して見られる特徴でもあります。それは、中国の社会に古くからある、「科挙の制度」の名残であると言われています。科挙の試験に合格した人材は、出自に関わらず、官吏に登用され、出世して家族の人々が、裕福な生活を続けることを可能にするからです。家族の人々は、能力のある親族を全員で支援します。
日本社会にも、中国の科挙に似た制度が導入されており、「官吏の登用試験」に合格することは、家の繁栄に重要な影響を与えるものでした。それは、平安時代の貴族社会でも、江戸時代の武家社会でも、平和な社会には共通していました。その傾向は、明治時代になって日本社会が近代化されるに従って、より強くなったと言えるでしょう。それは、戦前、軍に入る場合も、役人として政府に奉職する場合も同じでした。軍であれば、士官学校や兵学校、役人であれば、東京大学や京都大学などへ入学することが出世を約束しました。
第2次世界大戦後の日本の社会でも、この学歴を重視する傾向は変わらず、1990年代の末まで、日本社会では、高学歴であることが、高い社会的地位を確立するためには、重要でした。現在でも、中国や韓国では、そのような傾向が強く残っているため、若者たちの進学競争は熾烈を極めています。さらに、高い学歴を得ることは、より良い職業に就くためには、必須の条件になっています。このことが、ヨーロッパ社会の国々に比較すると、社会全体が高い進学率を示す傾向を生み出す要因になっており、20世紀後半までは、その社会の著しい経済発展を成し遂げる原因の一つでした。